15.5. 原核生物
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彼らはどこにでもいる!
今日では原核生物は生物がいるところであればどこにでも見つかる 真核生物には寒すぎる環境や熱すぎる環境、塩分が高すぎる環境、強酸性、強アルカリ性の環境であっても、原核生物は生息している 地球の表面から地下約3.2kmの金鉱山の壁に原核生物が見つかってさえいる
さらに原核生物の数は真核生物を遥かに凌駕している
ヒトの口腔内に生息している原核生物の数は過去を含めた世界の人口よりも多い
原核生物の現存量の総量は全真核生物の現存量の少なくとも10倍もある
個々の原核生物は非常に少ないが、集団としては地球とその生命に対して巨大なインパクトを持っている
人類への影響に関しては、深刻な病気を引き起こす比較的少数の種についてはよく知られている
紀元1300年代の黒死病(腺ペスト)はヨーロッパ中に広がり、人口の推定約25%の人々を死なせた 良性もしくは人類に有用な原核生物は有害なものと比べてはるかに多い
ヒトの身体の外や内部には、数百種類の細菌が生息している
原核生物の生態学的意義は重要であり、強調しすぎるということはない
原核生物のあるものは生物の死体を分解する
土壌や湖、河川、大洋の底部にいる分解者たちは化学元素を植物が利用できる無機化合物として環境に戻し、次に植物は動物に餌を与えるというようにつながっている もし、原核生物の分解者が消えてしまうと、すべての真核生物もまた絶滅するだろう
対照的に、初期の20億年間がそうであったように、原核生物は真核生物がいないところでも疑いなく生き続けていく
原核生物の構造と機能
原核生物は細胞の体制が真核生物とは基本的に異なっている
原核細胞の形
顕微鏡で細胞の形を観察することは、原核生物を同定する重要なステップ
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球状の種
房状に集合したもの球菌
鎖状に1列に並んだ球菌
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ロッド状(桿状)の原核生物
らせん状もしくは曲がったもの
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ほとんどの原核生物は単細胞で非常に小さいが、このような一般性にはともに例外もある
連鎖球菌のように、いくつかの種では細胞は2個もしくはそれ以上集まって存在する
また、あるものは同一クローンの細胞の永続的な凝集体であるコロニー(群体)をつくることができる https://gyazo.com/8abdbfaf6c5ce769035803d6278fa1b4
また、ある種のものは特殊なタイプの細胞として仕事を分業する簡単な多細胞体を示す https://gyazo.com/145f2d7312d8b7661188c7780d748053
さらに単細胞の種の中には、ほとんどの真核細胞よりも大きい巨大なものもいる
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運動するものの多くは1本もしくはそれ以上の鞭毛を持つ https://gyazo.com/306bad4aa4931eb19823b05f7cd34da6
好ましくない場所から離れるか、栄養など好ましい場所へ近づく
原核生物の増殖
多くの原核生物は好ましい条件では驚異的な速度で増殖できる
細胞は自分のDNAをほとんど連続して複製し続ける
1個の細胞が2個になり、さらに4, 8, 16と増殖する
種によっては最適条件ではたった20分で分裂して新しい世代を生み出すものもいる
もし、この増殖速度が変化せずに続くとすれば、1個の細胞からたった3日間で地球より重いコロニーを作る計算になる
幸いなことに、このような指数関数的増殖を長い間続けられる原核生物はいない
環境には養分や場所などの資源にいつもの制限がある
原核生物はまた代謝の老廃物を出して、コロニーのまわりの環境を汚すことになる
なお、細菌の感染のすぐ後に病気になったり、食品がすぐ悪くなったりする理由はこの速い増殖速度で理解できる
冷凍保存は食品が悪くなることを遅らせるが、低温が細菌を殺すのではなく、ほとんどの微生物の増殖が低温で非常に遅くなるため 原核生物の中にはとても厳しい環境で長時間、ときには何世紀もの間、内生胞子という特殊な休眠細胞を形成して生き延びることができる
好ましくない条件で原核細胞の内側につくられる熱い細胞壁で保護された細胞 https://gyazo.com/6b146cd585a9f8bf1a61ae8a2c45ca82
内生胞子は水や栄養の欠乏、極端な高温や低温、有害物質などのあらゆる障害に対して生存できる
沸騰水でさえもこの耐性細胞を殺すことはほとんどできない
環境が適したものになると、内生胞子は水を吸収して増殖を回復する
実験室で器具を殺菌するとき内生胞子を含めたすべての細胞を殺す必要がある
このとき、微生物学者は121℃の高圧水蒸気を利用するオートクレーブとよぶ圧力鍋を使用する
原核生物の栄養
生物学者が多様な生物を分類するとき、エネルギーと炭素を生物がどのように獲得するのか「栄養様式」をしばしば利用する エネルギー源
炭素源
このエネルギー源と炭素源を組み合わせて、すべての生物を4つの栄養方式にグループ分けできる
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残りの2つは原核生物にのみ見られる
原核生物の進化の2つの主要なグループ : 真正細菌と古細菌
分子レベルで多様な原核生物を比較して、生物学者は2つの主要なグループを見つけた
真正細菌と古細菌はともに原核生物の特徴をもつが、構造や生理的特性の多くで両者は互いに異なっている
その違いのいくつかは、古細菌が真正細菌よりも真核生物にもっと近縁であることを示唆している
アーキアはこのグループが最も古い細胞から由来したその古さに基づいてつけられた
原始地球に似ているかもしれないこのような極限環境に生息できる新しい生物はほとんどいない 超好熱生物(好熱古細菌)は、非常に熱い水中に生する 深海底の熱水噴出孔で100℃以上で生息するものさえ知られている これらは湖や沼沢の底土に多く生息する
膨大なメタン産生菌は動物の消化管内にも生息している
ヒトの小腸のガスはおもにメタン産生菌n代謝の結果によるもの
もっと重要なことは、ウシやシカなどの多くの動物が餌としてセルロースにもっぱら依存しているが、その消化を助けているのもメタン産生菌 真正細菌と人類
病気を起こす真正細菌
病気を起こす真正細菌や他の生物
ときには防御システムのバランスが病原体のほうに傾き、我々は病気になる
しかし、防御システムが栄養不足や治療(特に抗癌治療)、ウイルス感染などで弱まるとき、人体に常在する細菌であっても病気を起こすことがある ほとんどの病原体は毒素を生産することで病気を起こす 細菌の細胞が分泌する毒素
しかし、この黄色ブドウ球菌が切り傷などの傷口から体内に入ったり、汚染した食品をとると、黄色ブドウ球菌病という重い病気を引き起こす 分泌されるものではなく、ある種の細菌の外膜の化学成分
すべての内毒素は高熱や痛み、ときにはショック(血圧の危険な降下を伴う)などの共通の症状を起こす
この症状の重さは患者の体調や細菌の種類によって異なる
20世紀には「微生物」が病気を起こすことが発見され、特に先進諸国では細菌感染の発生は減少した 一般的には公衆衛生が細菌感染症を防ぐ最も効率的な手段 水処理施設、下水システムは世界中で公衆衛生において最重要であり続けている
抗生物質はほとんどの細菌感染症を治療するものとして発見された ライム病は害虫が媒介する病気として米国では最も多い 媒介するダニはシカや野生のネズミにとりついているが、ヒトからも血を吸う 抗生物質は感染後1ヶ月以内に投与されれば病気を治療できる
もし治療しなければ、ライム病は衰弱性関節炎、心臓病、神経系以上などを引き起こす可能性がある 今の所、もっともよい病漁法はダニを避けることと発疹が出たときの診断の重要性を伝える公共教育
疾病治療予防センター(CDCR)は、ダニが生息する地域の植物を避け、藪の中を歩くときはダニを見つけやすい明るさの色の服を着ること、また適当な昆虫の忌避剤を使用することを推奨している バイオテロリズム
2001年秋、5人の米国人がおそらくテロリストの攻撃による炭疽症で死亡した 人類には生物を兵器として使用してきた長く酷い歴史がある
南北アメリカの初期の征服者、入植者や戦争中の軍隊は意図的に原住民を病原細菌に感染させた
1930年代、日本政府は生物兵器計画を立て、数万人の中国人の兵士や民間人を殺した
訳注: 当時、日本を含めていくつかの国が生物兵器の研究をしていたが、「数万人の中国人の兵士や民間人を殺した」の部分は事実とは認められていない
1984年、オレゴンのあるカルト集団がレストランのサラダバーをサルモネラ菌で汚染させ、700人以上が病気になり、45人が病院に入院した 1990年代、別のカルト集団が東京で炭疽菌の伝染を試み、イラクではイラク軍が有害細菌を積んだミサイルを準備した
幸運なことに、これらの試みはどれも大きな災難を引き起こさなかった
米国は1943年に生物兵器の研究施設を発足させた
軍隊が炭疽菌やボツリヌス中毒のような病気を起こす新しい細菌の株を作り出した これらの病原菌を「兵器」にするために、研究者たちは特に毒性の高い下部を選別し、効率的に蔓延する方式を開発した
1964年にニクソン大統領が停止し、それまでに造られていたものを破壊するように命じた
兵器制御の難しさと一定のモラル上の嫌悪感
1975年、米国は生物兵器禁止協定にサインして、生物兵器を開発しないし、貯蔵もしないと誓約した 最終的に103の骨化がこの禁止協定に参加しているが、調印した国すべてが履行しているわけではない
原核生物の生態学的インパクト
原核生物と化学循環
動物は植物から窒素化合物を手に入れる
原核生物の別の重要な機能は、有機老廃物や生物の死骸の分解
原核生物は有機物を分解し、元素を無機物として環境に戻し、それは別の生物が利用する もし分解者がいなかったとすれば、元素は死体の有機物や老廃物に閉じ込められてしまうだろう 原核生物とバイオレメディエーション
生物を利用して、水や空気、土壌などから汚染を除くこと
下水はまず一連のフィルターと粉砕機に通し、固形物を廃液から分離する これらの微生物は汚泥の中の有機物を分解して、埋め立てゴミや肥料に利用できる物質に変換する
一方、液体の廃水は、ゆっくり回転する長い水平アームから岩石を敷き詰めた層にふきつけてじっくり濾過するシステムで処理する
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この岩石層を通過した浄水は殺菌した後、環境に放流される
原核生物をバイオレメディエーションに利用できる大きな可能性についてちょうど研究しているところ
大洋の海岸に天然にいるある種の細菌は石油を分解することができ、事故で流出した石油の除去に有用 遺伝子操作で強化した細菌は自然のものよりももっと強力に石油を分解できるかもしれない
細菌は古い鉱石採掘場の清浄化にも役立つかもしれない
鉱山の廃水は酸性度が強く重金属や他の有毒物質が多い 硫黄や硫黄化合物を酸化することによって、エネルギーを獲得し、鉱山廃水から金属を蓄積する 残念ながら、鉱山廃水の清浄化にこの菌は限定的にしか利用できない
遺伝子工学を介して解決されるかもしれない
現在の研究テーマの1つは、ヒトを殺す線量の何千倍もの放射線に耐えられる細菌 この種は放射性廃棄物を含む有害な廃棄上の清浄化を助けてくれるかもしれない 今生きている生物の様々な栄養様式と代謝経路は、地球を長い間唯一の生物群として支配してきた原核生物において進化したものから派生している
その後の進化の突破口は、真核細胞の起源や原生生物の多様化など、細胞の構造の進化